「ちゃんと説明したのに、なぜか相手に響いていない」
営業や接客の現場で、そんな経験をしたことはありませんか?
話す内容には自信がある。商品の良さも、サービスの価値も、しっかり伝えた。
それなのに、相手の反応が薄かったり、反応そのものがなかったりすることがある。
あと、どうすればいいの・・。
そんなとき、私たちは「伝え方が足りなかったのか」「もっとインパクトのある言葉を使えばよかったのか」と、言葉選びや話す順序ばかりに意識を向けてしまいがちです。
「オーシャンビューです」では伝わらなかったホテルの魅力が、「朝、カーテンを開けたら光る海が広がっている」という言葉に変わったとたん、相手の気持ちを動かす。
—まさに、事実を“体験”に変える力です。
けれど実は、どれだけ言葉を工夫しても、ストーリーを盛り込んでも、それでも響かない人がいます。
それはなぜか?相手の“タイプ”に合った伝え方になっていない可能性があるからです。このブログでは、相手のタイプ別、営業トークのコツをお伝えしていきますね。
「まだまだ朝晩冷えますね」と言ったときの、反応の違い
たとえば、ある日のレジ接客。
「まだまだ、朝晩冷えますね」と声をかけたときの、お客様の反応。
● 「そうですね」とだけ言ってそそくさと立ち去る方もいれば、
- 「今朝は5℃だったみたいですね」と、正確に気温まで言う方もいれば
- 「ねー!しかも来週また雪降るらしいじゃないですか!冬長すぎません?」と、大きなリアクションが返ってくる方もいれば
- 「ほんとですね~。皆さん朝早くからお仕事ですよね。いつもありがとうございます。」と相手を気づかう方もいます。
どれが良い・悪いではなく、人にはいろんな反応のパターンがある。そしてそれは、その人の“コミュニケーションスタイル”の傾向に深く関係しているのです。
ソーシャルスタイル理論:人の“受け取り方”は4タイプに分けられる
私が営業研修や接客指導の中でよく用いるのが、「ソーシャルスタイル理論」です。
これは、アメリカの産業心理学者 デビッド・メリル氏が提唱した、人のコミュニケーション傾向を4タイプに分類する理論のこと。
2つの軸——
- 感情表現の度合い(表に出す/抑える)
- 自己主張の強さ(主張する/受け止める)
でマトリックスをつくり、それぞれの人を以下の4タイプに分類します。
スタイル | 特徴 |
ドライバー | 結論重視で統率的。スピード感・効率性を求める。感情は抑える。 |
エクスプレッシブ | 感情豊かで熱意が豊富、話し好き。未来・アイデアに価値を置く。 |
アナリティカル | 丁寧で慎重。データや根拠を重視し、整合性に重きを置く。 |
エミアブル | 共感と調和を大切にし、主役より脇役を好む。安心感を好む。 |
先ほどの「寒いですね」という何げない声かけで考えると・・
「あ、そうですね」とだけ返してそのまま立ち去る方や、
「今朝は5℃だったみたいですね」と事実を淡々と返す方は、ドライバーやアナリティカルタイプの可能性があります。
一方で、「ねー!しかも来週また雪降るらしいじゃないですか!冬長すぎません?」と話をどんどん膨らませる方や、
「ほんとですね~。皆さん朝早くからお仕事ですよね。いつもありがとうございます」と相手を気づかうような言葉を返す方は、エクスプレッシブやエミアブルの傾向が強いと言えるでしょう。
つまり、人によって「心地よく受け取れるコミュニケーションのかたち」がまったく異なるのです。
同じ内容でも、伝え方は変えた方がいい
営業や接客の場で、「この言い方で全員に通じる」は、なかなかありません。
同じ商品を紹介するにしても、たとえば:
- ドライバーには、「結論→効果→理由」の順で端的に
- アナリティカルには、「データ・根拠・比較表現」で論理的に
- エミアブルには、「安心感」「使う人の声」「穏やかな語り口」で
- エクスプレッシブには、「熱量」「ビジョン」「わくわくする未来像」を
といったように、相手に合わせた伝え方を選ぶことで、反応が大きく変わります。
逆にいえば、内容は間違っていなくても「話し方が合っていない」だけで、伝わらなくなることがあるのです。
相手の耳に届く話し方、できていますか?
伝え方が違えば、伝わり方が変わる。
そして、伝わり方が変われば、結果も変わってきます。
今回のブログでは、「人によって響く言葉が違う」という視点と、その考え方のひとつとしてソーシャルスタイル理論をご紹介しました。
「タイプ別の具体的な伝え方」は、また改めて別のコラムでご紹介していく予定です。
まずは、自分の“話し方のクセ”に気づき、相手の反応を観察するところから始めてみてください。
営業も接客も、「正しく伝えること」より、「届くように伝えること」が大切です。
※ソーシャルスタイル理論を使った研修は、多業種の営業部門、お客様対応部門のほか、飲食業、金融業などで提供しています。一気に成績があがった営業パーソンや、「お客様対応が楽しくなった」という接客スタッフが続々と生まれている研修です。ご興味があれば、お問合せください。
2025年4月16日、ダイヤモンド・オンラインに掲載された私のコラムでは、「ストーリーが心を動かす」というテーマで、情報に情景や体験を加える大切さをお伝えしました。
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『話がヘタな人は「情報だけを伝える」。じゃあ、話がうまい人はどう言う?』

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